鮎武者・追星ファイター、沈黙の2時間を歩く
静かに、川は流れていた。
大会当日。
名は呼ばれ、抽選で決まったのは「第1エリア」。
本部前から上流──昨日の練習で何度も見た流れや。
ただ今日は、状況が違う。
人が入り、空気が張り詰め、
鮎の追いも、こちらの心も、研ぎ澄まされる。
開戦、動けぬ2時間
8時、号砲とともに一斉に竿が立つ。
俺は迷わず上流へ。昨日の感触を信じて。
まずは浅場の石まわりへ、
反応は……ない。
ほんの少し囮をズラす。
沈黙。
さらに10m上流へ。
変化なし。
試釣で見えた“石”に入れても、
まったく反応がない。
「……これが、本番の川か。」
焦りと違う、妙な冷たさ。
前回釣行のような「そこにいる感じ」が、まるで消えていた。
読みは外れたのか
右へ左へ、20分刻みで探るが無音。
下からの選手は、竿を曲げている。
本部より下は、動いていた。
だが、いま動くとタイムロス。
1時間半で切り替えても、場所がない。
動けない自分。
掛からない囮。
反応のない川。
「勝負を読む力が、足りなかった──」
終了と悔しさ
2時間、ゼロ。
終了を告げる合図が川に響いたとき、
俺は、ただ水面を見つめていた。
鮎はいた。
ただ、俺には掛けられなかった。
この2時間は、正真正銘の完敗。
そして午後
2回戦に進んだ仲間を見送り、
俺は川を離れた。
「悔しいけど、何も得られなかったわけじゃない」
昨日の感触が、今日の判断を鈍らせた。
経験を“信じる力”と、“疑う勇気”。
両方あってこそ、次へ進める。
追星ファイター語録
「鮎は追わんでも、勝負はこっちを試してくる」
おまけのひとこと
ゼロ匹。完敗。
でもな、せめて“掛からん理由”だけでも釣れた気がしたで(笑)
次回予告
▶ 第3話:「再起、長良川へ──郡上で掴む希望」
※この連載は、筆者「かっつん」が“追星ファイター”として綴る実録型釣行記です。
悔しさの中にこそ、鮎釣りの本質が眠っていると信じて。
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